アサーティブ・コミュニケーションのスキル

報告者:研修者A.I
研修実施日:2013年11月16日(土)~17日(日)

エンパワメント・センターとすてっぷが主催の「アサーティブ・コミュニケーションのスキル研修」を受講しました。講師は、人権問題や子ども・女性への虐待防止などをテーマに多方面でご活躍されているエンパワメント・センター主宰の森田ゆりさんとのことで、どのような研修になるのかとても楽しみにしていました。当日の会場には、遠方から足を運ばれた方も多く、様々な年代・性別の参加者が、私と同じく森田さんの講義を心待ちにしているようでした。

アサーティブ・コミュニケーションとは

研修風景1

アサーティブネスとは、「自分がどう感じているか、何を欲しているのかを的確に認知し、それを相手に率直に伝えるコミュニケーション・スキル」(森田ゆり著『アサーティブネス研修ワークブック』より)です。自身の気持ちを大切にし、尊重すると同時に相手をも尊重するアサーティブネスの理論とスキルを学び、自身の課題をロールプレイで練習することが、今回の研修の主な目的です。

1日目(理論編)

13人が参加、まずは6~7人の2グループに分かれて自己紹介から。これから2日間ともに学ぶ方々と顔合わせをしました。その後、全員でアサーティブネスとは何かを定義。ふさわしそうな言葉が色々出ましたが、今回は「率直な自己表現」となりました。この定義は、最終日に正しかったか確認するそうです。私たちにとってのアサーティブネスはどのような広がりを見せるのか、明日が楽しみになりました。

1日目は理論編と銘打ってある通り、自分自身を知るための自己診断ワークが主でした。森田さん曰く、「他者とのコミュニケーションの前に、自分自身とコミュニケーションを取ること、自分自身と向き合うことが大切」なのだそうです。

ワーク

  1. アサーティブネスのキーワードに自分がどれだけ当てはまっているか5段階評価で客観的に確認するワーク
  2. 人間関係で対立したときに自分がどのような態度をとったのかを書き出して自身のパターンを確認し、その態度はアサーティブであったか、そうでないならばなぜアサーティブになれなかったのか要因を探るワーク
    と続き、2人組になっての作業。
  3. 一方がアサーティブである権利を述べて相手にそれを受容してもらうアファメーション
  4. 自身の否定的な独り言を肯定的な言い方に変えてもらう「短所は長所」ワーク
    を行い、自分自身の行動や考え方の癖やパターン、そして意識の奥底にあるネガティブな感情を知りました。そして、自分で思っている短所は客観的にみると決して悪いことではなく、捉え方によっては長所でもあること、短所を切り捨てるのではなく受け入れることが大切、ということを学びました。

2日目(実践編)

今回の研修のメインともいうべき2日目です。ロールプレイを中心に、外に発信するための具体的なスキルを学びました。午後からは、参加者自身の課題についてのロールプレイが予定されています。

まずは1日目と同じく自己紹介から。昨日のワークを経て顔見知りになっているためか、和やかに、スムーズに進みました。

スキルその1 I(アイ)メッセージは、日常よくやりがちな「あなたが○○だから~だ」という表現を「私は~と感じている」という風に、自分目線に言い換えて伝えることです。I=EYE(目)であり、本当に伝えたいことは相手の目を見て言うと本気が伝わりやすい、とのこと。日常的に使えるスキルですよね。

スキルその2 相手にどうしてほしいか伝える際に、相手の事情や言い分をまず受容することが大切とのこと。さらに、現状に代わる代替案を付け加えてから自分の要望を伝えると、意見が通りやすいそうです。

研修風景2

参考に、森田さんのロールプレイのデモンストレーションを簡単に掲載します。自分の用事があるため相手にもう少し早く帰ってきてほしいと伝える場合、「あなたの仕事(学校)もいろいろあって大変なことはわかる」とまずは相手を受容します。そして相手の目を見て(重要!Iメッセージです!)「だけど、私にも大切な用事があるのです。忙しいのはわかるけど、約束に遅れるなら、せめて連絡を一本くれると助かるのだけど(代替案です!)」という感じでしょうか。相手を受容しつつ、自分の意見・要望もきちんと伝えています。感情的になって相手を責めていないので、相手も冷静に対応してくれることが多いとのこと。なるほど、と納得させられました。

このように、アサーティブ・コミュニケーションのスキルは、人と人とが対立した場面において、大きく活かせるものなのです。しかし、私たちにはそのようなスキルを活かしたコミュニケーションの経験があまりありません。様々なパターンを午後からのロールプレイで学び、各々が日常生活のなかで繰り返し練習できるようになる、というのが2日目の目的です。ロールプレイ自体が初めてという方もいましたので、まずはテキストの事例に添って体験です。各グループで役割分担(当人、相手、オブザーバー)を行ってからロールプレイを開始しました。終了後はグループごとで話し合い、再度ロールプレイをやってみるグループ、役割を変えて実演するグループ、白熱した話し合いを続けたグループと様々でしたが、アサーティブな対応について初めて触れた時間となりました。

ハートの風船(イラスト)

お昼休みを挟み、いよいよ「自身の課題についてのロールプレイ」です。参加者から多種多様な事例が出されましたが、そこから森田さんが、皆の勉強にもなると判断された3つの事例を使い、実際にロールプレイを行いました。事例提供者は当事者、相手役をそれ以外の参加者が担い、いよいよスタートです。皆さん初めてとは思えないほど集中して実演されていました。ロールプレイ後には森田さんのアドバイスをいただき、参加者全員でよりよい対応の仕方について議論し、学びました。3つとも、今実際に困っているケースであるとのこと、実演した参加者の皆さんには大きな収穫があったようです。まさに、参加型研修の醍醐味です。

最後に、初日のアサーティブネスの定義「率直な自己表現」が合っていたかどうか確認、その定義で問題ないとのことで、晴れやかに、無事2日間の研修を終了しました。

全体を通しての感想

アサーティブ・コミュニケーションのスキルは、常に必要というわけではなく、主に言いにくいことを相手に伝えたり、対立意見を言ったりする場面に活かすものであるとのことですが、今回の研修で感じたことは、まずは自分自身と向き合い、コミュニケーションや感情の癖を知ることで、よりより人間関係を築くきっかけとなり得るということです。森田さんが、「最大の難関は自分自身に対してアサーティブになること」(森田ゆり著『アサーティブネス研修ワークブック』より)とおっしゃっている通り、私たち…特に女性は、自分自身の持つ権利に疎いのではないか、と感じました。私たち、特に女性は、自分の気持ちや意見を公にすることに抵抗を感じるよう育てられてきています。また、周りの意見や考え方を尊重することが大切、とも教えられてきました。例えそれが自分自身の望まないことだとしても、そうあるべき、と少なからず思っています。しかしこれからは、相手はもちろんですが、自分自身の気持ちも意見も大切にし、尊重できるようなコミュニケーションを身に付けるべき時代なのかもしれません。私もあなたも、お互いが心地よく生きていけることが、何より幸せなのだから。

自分自身について、コミュニケーションについて、そしてジェンダーについても深く考えさせられた研修でした。

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