働くママと子育て

西野智子(一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団職員)
実施日:2013年7月19日(金)

子育ては大変だ!

会場風景(写真)

今日集まっているみなさんは、子どもを育てながら働くママ達です。毎日、仕事と家事、育児の両立で忙しくしていることでしょう。この大変さをどうやって乗り越えたらいいのか、今まさに子育て中のママ同士で意見交換できたらと考えています。

私も二人の娘を育てながら今も働き続けていますが、正直なところ何が何だかわからないまま走り続けてきた感じです。決して満足な子育てができているとは言えませんが、なんとか娘達は大きくなりました。何か参考になることがお伝えできたら幸いです。

参加者意見

  • 二人の子どもが男の子でよく喧嘩する
  • 0歳で夜中も4時間おきにミルクを飲ましている
  • 保育園が遠く、電車徒歩で40分かかる
  • 朝、機嫌が悪くて、準備が大変
  • なるべく怒らないように心がけている

子育ての悩みや苦労は、子どもの年齢が上がるにしたがって内容が変化します。小さい頃は、食べ物の好き嫌いが多いとか、よく熱をだして保育園に預かってもらえないとか子どもに直接関わる理由が多いようです。小学生、中学生、それ以降になると、勉強ができない、悪さをする等子どもの資質や行動に関わることに加え、子どもと他者との問題が増えてきます。友達とけんかしたり、最近はいじめ問題もあり、他者が介在することによって複雑な悩みとなります。また母親自身も、ママ友との付き合いの中での葛藤を経験することもあります。子どものことで、本来頼りにするべき先生と意見が合わずどうしたらよいか悩むこともあります。これから先、子どもがいることは働く上での活力にもなりますが、やはり大変なものであることは覚悟しておく必要があります。

理想のママと現実

世の中には性別役割分担にとらわれた理想の母親像が漠然とあります。優しいママ、明るいママ、料理が得意なママ等が頭に浮かぶでしょう。

参加者意見

  • やさしいしゃべり方ができる
  • さびしい思いをさせない
  • いつでも元気、パワフル
  • 料理上手

テレビ等のメディアを通して理想の家族像を垣間見ることもあります。以前、ある車のコマーシャルで、休日に家族でキャンプに出かけ釣りやバーベキューを楽しむ光景が流れていました。働くママがキャンプに行くとなると、前日からの買出し、準備、また帰宅してからの片付け、翌日からは出勤という忙しさを伴います。確かにキャンプは楽しいですが体はくたくたです。また、寒い冬に温かいシチューを囲んで家族がのんびり団欒している様子が流れていましたが、働くママにとって夕食の準備は大きな負担であり、のんびりと穏やかな夕食とはなかなかいかないものです。きょうだい喧嘩や夫婦喧嘩も日常茶飯事というのが現実ではないでしょうか。

会場風景(写真)

私自身は理想と現実のギャップに落ち込むことがよくありました。忙しさのあまり、母親が言ってはいけないと言われる「早くして」という言葉をよく使いました。優しいどころか自分に余裕がなく怒ってばかりの時もあり、後になり娘達に「あの頃怒ってばっかりだった…」と言われ肩身の狭い思いをします。仕事の繁忙期になると夕食の準備をする時間も気力もなくなり、受験前の娘がブチ切れたこともあります。

母親として常に子どもの目線に立って、おおらかな心で接し、不自由な思いをさせずに育てていきたいという理想は、仕事が充実すればはなれていくものでした。

「これだけはする」を見つける

専業ママに比べ働くママは、時間的にも精神的にも理想の母親像から離れるのは仕方ありません。

そこで、理想に近づこうと努力するより、理想をいかに現実と折り合いをつけるかを考えることを提案します。

「これだけはする」を考えてください。

例えば、優しいママになりたいと思っているけど実際は怒ってばかりのママであれば、朝の見送りだけは「いってらっしゃい」と声をかけて必ず笑顔で手を振る。これだけは必ずする。心がけは子どもには伝わりますし、毎日続ければママの声や笑顔は子どもの記憶に残ります。何よりも、ママ自身も朝優しく送り出せたら、今日の自分は優しいママだったと自尊感情が保たれ、心に余裕ができます。

料理(イラスト)

料理が上手になりたいとは思っているけど実際は苦手なママであれば、一品だけ作ることにする。簡単な料理でいいのです。ベテラン主婦は手抜き料理をたくさん知っているので教えてもらいましょう。毎日一品作っていたらレパートリーは少しずつ増えるし手際もよくなります。自分が具体的にできることを考えて実践してみてください。

私の場合「これだけはする」は毎晩寝る前に布団の中で絵本の読み聞かせをしました。小学校の低学年くらいまで続けました。一つ「これだけはした」と言えたら上出来としましょう。

(補足)食事について、最近、朝食を取らずに登校する子どもが増えているようですが、朝食を抜くと脳のエネルギーが不足し、集中力が欠けたり精神的に不安定になったりするとの統計がでています。成長期の子どもには朝食は必要です。必ず朝食を取って送り出すように気をつけてください。

職業人として

子育てをしながらも、一歩社会に出れば職業人としての責任が求められます。理想の職業人はどんなイメージでしょうか。

参加者意見

  • 元気、明るい
  • シャツにスカートをはいている
  • てきぱきしている
  • 公私を分けることができる

その他には、挨拶ができる、報告・連絡・相談ができる、期限を守る、仕事を最後まで成し遂げる等があります。どれも難しいことですが、時間をかけて獲得していく必要があります。

しかし、もっと簡単なことだけれど働くママにとってはどうにもならないことがあります。急に休むことと、残業ができないことです。子どもの病気は突然ですから仕事の段取りとは関係なく急に休まざるを得ないものです。また、急な仕事が入ったとしても、保育園にはお迎えの時間もあるし、学童保育から帰宅した子どもを遅くまで一人で待たせるのも気がかりで残業は避けたいものです。

働く女性を支援するための法律が整備され、子育て中の労働者には様々な権利が認められているものの、企業側に人員の余裕はなく休みにくいのが実情です。女性の多い職場で子育てしながら働く環境ができているところもありますが、このような職場もまだまだ少ないです。すてっぷでは入職当初から年次有給休暇があり皆さん利用していますが、通常入社6カ月間は年次有給休暇はないと思っておいて下さい。

面接で、いまだに「子どもをみてくれる人はいますか」「残業はできますか」と聞かれることもあります。まだまだ、急に休むことや残業ができないことは働くママにとって就職の際にも不利となる大きな要因だと考えられます。

(補足)仕事は最初からできるものではありません。直接仕事にかかわることは人に教えてもらう、確認することを心がけましょう。関連することは、自分で調べ、勉強しましょう。知識と経験を積めば、職場で必要な人材となります。

助けてくれる人達

仕事を続けるには他人の援助が不可欠です。

まずは、定期に子どもの育児をしてくれる保育園や学童保育を確保しましょう。

子どもを看病する女性(イラスト)

次に、緊急の場合に手助けしてくれる支援者を探しておきましょう。夜間保育園や病児保育園、親、兄弟姉妹など。その他、子育てや仕事での悩みを聞いてくれる友達や子どもの友達のママなど。

あとは、深刻な問題に直面した場合に相談できる専門家を探しておきましょう。身近な人に相談しても解決しないことや、誰にも言えない問題が起こることもあります。すてっぷはここに位置しますので何か困った場合は相談に来てください。

この中で、子どもの友達のママ(ママ友)との付き合いについて皆さんの意見を聞いてみましょう。

参加者意見

  • 保育園の母親同士は忙しいので挨拶程度で終わっているし、近所の人ともあまりかかわることはない
  • 他の母親との関係がつくりにくい
  • 幼稚園が同じ母親達はグループができていて入りにくいことがある
  • 「助けて…」といいにくい。お返しができないかもと思ってしまう
  • 防災対策もあって近所の人とは仲良くしている

人によって距離感が違うようです。実際、ママ友のグループがあって仲良くしている人もいれば、なるべくママ友は作らないようにしている人、人それぞれでしょう。

私自身はママ友はできればいた方がよいと考えます。情報を得られるのが利点です。忘れ物をしていたとか居残りをさせられていたとか、都合の悪いことはママ友から教えてもらったものです。また、自分の目でみる我が子の様子だけでなく、友達の目から見た我が子の行動を伝えてもらえて客観的な視点を持つことができます。

もう一つの利点は、自分だけでなく子どもが助けてもらえることです。娘が中学生の時のことですが、運動会が雨で順延となり平日に開催されたことがありました。運動会当日は仕事の予定が入っており見学できないと諦めていたところ、急に仕事がキャンセルとなりあわてて見学に行くことができました。父兄席の一番うしろから娘が走る様子を見ることができましたが、娘にはたくさんのママ達の大きな声援がかかっているのです。平日で私が運動会に来ることができないと思っていたママ達が、娘の順番を気にかけてくれ私の代わりに声を張り上げて応援してくれていました。小さな出来事ですが、娘が無事成長しているのは周りの人たちのお陰だと感謝しました。

ベビーカーを押す女性(イラスト)

しかし、いい事ばかりでもありません。子ども同士が仲良しでも親同士は考え方が違っていて話が合わなかったり、逆に親同士は信頼し合えて子育ての悩みなどを打ち明けたりできるのに、子ども同士は馬が合わずギクシャクすることもあります。また、子ども同士のけんかがいつのまにか親同士の不仲になることもあるのです。子どもを介しての付き合いは、面倒なことが起こるのも事実です。したがってママ同士のお付き合いがストレスとなるようであれば無理に作る必要はありませんが、ママ友は面倒だと考えている人も、これから先に何かきっかけがあればつながりを大切にしてみてもよいと思います。助けてくれる人には甘えてください。すぐにお返しができなくてもいつかできるでしょう。あなたがお返しできなくても子どもがお返ししてるはずです。

まわりの人々に助けてもらって子育ては充実するものです。子育てを安心してできれば、仕事も続けられます。すてっぷにいる間にできるだけ助けてもらえる環境づくりをしておきましょう。

子ども自慢

ワーキング 子どもの自慢話をしてもらいました。

  • 赤ちゃんなのでコロコロしてかわいい。寝返りしても自分でもどれないのもかわいい。保育所あずけるときに寂しそうな顔をする。朝、行くまでの時間一緒に寝転んで楽しんでいる。
  • かわいくてしょうがない。前髪切ったらおでこが丸見えになったのがかわいかった。洗濯物をたたんだりお手伝いをよくしてくれる。寝込んだ時にアイスノンや体温計持ってきてくれ看病してくれた。
  • おしゃれ。ネールや髪を見て「かわいいな」と言う。犬が好きでやさしい子。お母さんがネールの学校行けるよう、おりこうにしている。
  • 上の子はやさしい。「ママの料理おいしい、ママはかわいい」と褒めてくれる。他のお母さんに「うちの子にやさしくしてもらった」と感謝されたこともある。自分から謝ったりできる。下の子は顔がかわいい。正義感が強い。母を守る。男義ある。

皆さんの子どもさんがとてもかわいいことがわかりました。愛情をもって育てていることも感じました。大丈夫、みんな立派に子どもを育てられます。働きながら子どもを育てることは大変ですが、子どもは頑張っているママを見ていて助けてくれます。頑張っているママをみて強くなります。理想を高く揚げず、できることを整理してください。まずは働くための環境を整えて出発してください。

研修参加者の感想
  • 「自分の子ども自慢」が楽しかった。これならいくらでも話せそうです。
  • 人に甘えていいのだと知りました。しかしまわりを頼りたくても、今のこところ近所に身内も友だちもありません。ご近所付き合いなど、まわりに頼れる環境づくりをしたいと思いました。
  • 理想の母親象と自分とのギャップについて考えました。今はまだ子ども小さいからあまり感じないが、将来「子どもがどう感じるか、自分をどう見るか」という不安があります。シングルマザーなので他の家庭より子どもが寂しい思いをするかもと思ったが「そんなに心配しなくても子どもはしっかり生きていくよ」と励ます言葉をかけてもらった。子どもにとっては、母親との関係だけではなく、母親以外の人ともかかわることも大切だと思いました。
  • 家に帰って、自分の母と育児について話をしました。豊中市に病児保育(シャイニーキッズ)があること、今通っている保育所が遠いので近くに転所届を出していることなど、母と話すきっかけになりました。
西野智子プロフィール

西野智子一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団、総務課主任。
経理・労務の業務を担当。
結婚を期に退職し専業主婦となるが二人目を出産後、社会復帰し企業を経て現在に至る。

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