滑舌(かつぜつ)を学ぶ

石浜繁子(おはなし会とっとこ)、嵩(かさみ)史子(「日本放映プロ」所属)
実施日:2013年12月12日(木)

最初に石浜繁子さん、嵩 史子さんを取材したラジオ番組(神戸市長田区FMわいわいで放送 20分)を聞くことから講座が始まりました。番組は、関西学院大学総合政策科山中速人研究室の学生坂上晃典さんが卒業研究として朗読人ひまわり主催のチャリティイベントに密着取材をしてできたものです。

取材者の坂上さんは番組中で石浜さんに取材してイベントへの想いとして述べられた「いのちと平和、いのちの大切さ、無駄ないのちはないこと。情報化社会の中でゲームの中でリセットされていくいのちのなかで絵本を通して生身の人間を感じてほしい」という言葉を紹介していますが、取材者の坂上さん自身もボランティアとして参加した席からそれが伝わってきたと語っています。

講師の石浜さんからすてっぷを大切に思う気持ちと、そこから「しごと準備講座」の一環としてこの講座を企画した想いが述べられた後、続いて嵩史子さんによる「滑舌講座」が始まりました。

石浜繁子

すてっぷへの想いとみなさんへの期待

会場風景(写真)

私にとってのボランティアは、公民館の役員会で心を込めて出した一杯のお茶に「ありがとう」の言葉をもらったことで「こんな小さなことで喜ばれる!」と感じたことから始まりました。ところが、東京から来たばかりで戸惑うことが多い中、ボランティアで出会った人々は、とても親切に教えていただきすべてが自分を成長させてくれた貴重な学びの場でした。しかも、無料で・・そのころから人と話すことが苦にならなくなり、反対にコミュニケーションすることが楽しくなりました。

また、「すてっぷ」では、仕事上必要に迫られ情報ライブラリー主催の「絵本の読み聞かせ」講習会を受講し、受講した仲間と「おはなし会とっとこ」をスタートしました。さらに、ライブラリーで1冊の本に出会い保育士試験の勉強を始めました。『保育士になるには』という本1冊で最初の年に3教科受かり、2年目は参考書を買って独学で合格しました。このようにすてっぷは自分の人生を変えた素敵な出会いをさせてくれた場です。

さらに2013年にすてっぷの選定評価委員会の市民委員になったことで施設について何カ月も調べて分厚い書類を読む立場になりました。その作業を通してこの施設がいかに市民にとって大切な場所であるのかを身を持って学びました。そして、すてっぷは挑戦し、勇気をもらえる場、チャレンジすることが可能な場だと改めて思うようになりました。すてっぷでは、大きな花を咲かせる可能性があることが分かったのです。私自身も家庭での生きづらさの背景も納得できるようになりました。

また、市民委員をやって気づいたことですが、私が就職したとき、それは大きな商事会社だったんですが私のように中卒の人は新入式をやってもらえなかったことです。その時、すごく理不尽な気持ちや悔しい気持ちをもったのですが、今回委員をしてこのようなことを生み出す社会の矛盾に気づくことにもなりました。

若い皆さんへ

緊急雇用で働くみなさんは、ここで働くことになったことは、とてもラッキーだったのではないかと思います。自分の仕事をしていても否が応でも視野を広げ、市民からも見られている場所だからです。

会場風景(写真)

私ごとですが、電話交換手として働き始めたころ、上司は口を酸っぱくして何度も「君たちは受付と同様に会社の顔なのだから第1印象が大切で、常にそのことを忘れないでしっかり対応するように」と教えてくれました。

そうなんです。みなさんは、すてっぷの「顔」なんです。そのことを意識しながら、はきはきとてきぱきと笑顔で生き生きと応対する姿を市民が目にすることで市民は一歩踏み出す勇気を得ることができます。だから、今日、学ぶ滑舌講座が生きてくるのです。

嵩さんの指導は自分の財産になると思います。大切な滑舌の学び方を嵩さんは出し惜しみせず教えてくれるでしょう。すてっぷでの勤務はあと3か月ほどですが、滑舌を武器にここから羽ばたいていってほしいと思います。

すてっぷはのびしろがたくさんある職場です。私も若かったら挑戦したい場です。ぜひ、先輩たちの言葉や気づいたことは全部メモしてください。そして、不安に思うことを聞きいて先輩から学ぶと必ず成長できる場だと思います。

厳しいことが待っていても不安に思わないでください。チャレンジしてください。最初から自分に合った職場に合える人は一握りです。応募して断られても縁がなかったと思って次に挑戦すればよいのです。

花とハート(イラスト)

すてっぷが人間にとって生きる意味において本当に必要な施設だということを市民委員になってしっかりと理解しました。ここは、しんどくなったときに立ち寄れる場。生きる力が出てくる場です。だからこそ、皆さんに「滑舌」を学び一生の財産にしてほしいと思って今日の講座を提案させていただきました。

最後に次の詩を紹介します。

「幸せは いつも 自分の心が決める
  人生にとって もっとも 大切な時 それは いつでも 今です」
  (あいだ みつお)

嵩 史子

さあ、始めよう滑舌講座

私は視覚障害の方向けの「音訳」から保育園の「読み聞かせ」を経験してきました。65歳で夫をなくしてこれからどう生きようかと考えたとき、朗読を活かして何かしたいと思いました。そして、「日本放映プロ」のオーディションを受けてみたらシニアコースに合格したのです。そこで初めに教えられたことは、まず雰囲気です。顔の口角を上げると表情が変わります。これが一番の基礎です。

それでは、始めましょう。

1)明るい表情は口角を上げることによって生まれます

口角を上げると表情が軽くなって、相手があなたの言うことを聞いてみたいと思うようになります。

2)イメージが重要

みなさんは、周りの人が観客だと思って、自分は女優だと思って振る舞いましょう。電話の応対もうっとうしい声で出ると相手は言いづらくなります。いい声で明るいトーンで電話に出ましょう。

3)声帯を鍛える

ワインのコルクをくわえて発声練習すると声帯が鍛えられます。くわえたときはなるべく口を動かさないように。これは声帯を鍛えるものですから。

(ここで、受講者一人ひとりがコルクを加えて「あえいうえおあお」・・・発声練習を1人ずつ真剣にやりました。コルクで発声練習をした後で声を出すと驚くほど声に張りが出てきます)

4)腹式呼吸の練習

会場風景(写真)

滑舌の練習には腹式呼吸が大事です。おなかをぷっとふくらませると息が入ります。そこから3メートル先に声を飛ばすつもりで発声練習するとよいでしょう。

ブレス(息継ぎ)の練習は、腹式呼吸でしましょう。

5)滑舌を練習するときの留意点

  • 姿勢が大事
  • 1字ずつはっきり言いましょう
  • 「間(ま)」が大事です。適切な間を開けることによって朗読される文章の「景色」も思い起こさせることができます。
  • 言いたいところは言い直す。伝えたいところは高いトーンで出るようにしましょう。
  • 速さは2,000字を10分で読むくらいのつもりで練習してください。

6)面接の心得

  • 照れないこと
  • つくらないで自分の言葉でしゃべること
研修参加者の感想
女性(イラスト)
  • 演劇をやっていたときの発声練習を思い出して懐かしかったです。コルクを使った練習を続けてみたいと思います。
  • 緊張しながら発声練習に参加しました。とても楽しく充実した時間でした。
  • 自分の好きなことや得意なことを理解し努力しながらその道に進んでいる方のお話だったので、一つの生き方を教えてもらいためになりました。
  • 普段の開催のなかでも、言葉の「間」を意識したいと思いました。
  • 面接にも日常生活にも役立つと思いました。姿勢一つで越えおの出方もちがうのには驚きました。前向きに頑張っていこうと思いました。
資料

参考文献 『発音アクセント辞典』(NHK出版)

プロフィール

石浜繁子

石浜繁子1964年に豊中市庄内幸町に引っ越し地域デビュー。公民分館主事、PTA広報委員長、生活指導委員長等を勤める。保育所でパート勤務ののち、64歳で保育士の国家試験に合格。すてっぷ登録団体「おはなし会とっとこ(11年目)」「朗読人ひまわり(2年目)」代表。2011年より毎年、未来の子どもたちに体験させたくない悲惨な思いを絵本を通して語り継ぎ命の大切さを伝えていく「3.11東日本大震災支援チャリティーイベント」を開催。

嵩 史子

嵩 史子24歳から専業主婦を続けたのち、40歳でNHK文化センター「ボランティアの朗読」講座を受講し、林曠子先生に6年間教えを乞う。その後「曠の会」に所属しライトハウスで対面朗読、図書館や視聴覚障害のある方の依頼で録音図書作成をする。「曠の会」退会後、保育所、幼稚園で読み語りをする。65歳で「日本放映プロ」に所属し、演劇のノウハウを勉強しながら演劇性のある朗読に興味を持ち、再び「NHK文化センター」で高梨敬一郎氏、西橋正泰氏に教えを受ける。

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