自分を見つめるワークショップ

植木美恵子(一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団職員)
実施日:2013年7月12日(金)

自分をあたたかく見つめる

わたしたちは生まれてから今日まで、ずっと自分を生きてます。他の人の人生を生きたことはなくて、ずっと自分を生きてる。そんな自分のことをどれだけ知っているでしょう?

今日はすこしゆっくりと自分を振り返り、見つめる時間を一緒に過ごしたいと思います。

ワーク 1-1 「今日の名刺づくり」

ワークシート「今日の名刺」に記入してみてください。これはテストではないので、正解があるわけではありません。「ちゃんとしたこと書かなきゃ!」「どう評価されるんだろう…」「こんなこと書いたら、どう思われるやろう…」などと思わずに、わたしはどう感じているかを自分に問いかけて素直に書いてくださいね。後でお隣の人と紹介しあうので、言いたくないなと思うことは書かなくてだいじょうぶです。

ワーク 1-2 書いたものをもとに、二人ペアで紹介しあってみましょう。

自己覚知・自己開示

仕事のことを考えるとき、自分と向き合うことになります。どんな仕事をしたいんだろう?何に向いているのだろう等々など。自分を理解していく大きなきっかけになります。自分を知っていくツールのひとつが適性テストであったりするのだけれど、同時に自分で自分のことを知っていくことがとても大切なんです。私たちは限られたとても狭い理解で「わたしは○○だ」と決めつけていることが多い。そしてその狭い枠組みで他人のことも見ているので、理解不能なことがたくさん起きたりする。人生が生きやすくなるためにも、自分を知る枠組みを拡げてみることはとてもおすすめです。

会場風景(写真)

わたしは自分のことをコミュニケーションが得意だと思っていたんです。でも違った。自分がどう感じているかよりも、周りにどう思われるかを軸にして生きてきたから、周りからは評価されるんだけれど、私自身はしんどい。何かがおかしい…そう思い始めて心理やビジネス系の本を読んだり、セミナーに参加したりしてきました。その中で「長所伸展法」という考え方に出会ったのです。以前は、ここがダメだから直すという「短所矯正法」の考え方が一般的だったように感じます。まさしくわたしもその中で生きてきた。でも「足りないから補う」ことをやっていると、どこまでいっても安心した満足した状態にならない。自分をあたたかく見つめることや「長所伸展法」の考え方に触れて、少しずつ楽に、生きやすくなってきたのです。

わたしは誰でしょう? 好き?きらい?

ワーク 2-1 「わたしは誰でしょう?」自分を文章で表現する

いま自分は自分のことをどうとらえているか、それをちょっとチェックしてみたいと思います。生まれたときからずっと付き合っている自分。その自分のことを20の文章で表現してみましょう。思いつくままに書いていってくださいね。

書いてみてどうでしたか?すらすら書けた人も、意外と難しい!と感じた人もいるかもしれません。

ワーク 2-2 書いたものを、また二人で紹介しあってみてください。自分の書いたことを大切に話し、相手の話を大切に聴くということを意識してください。

会場風景(写真)

いろんな自分を知っておくこと、そして自分を表現することばを豊かにもっておくことは、自分と丁寧につきあうことに繋がります。面接で面接官が見ているひとつは、応募者の方がどれだけ自分と丁寧に向き合っているかです。これから少しこのことも意識して過ごしてみてください。

ワーク 2-3 「好き?きらい?」を考える

いま書いてもらった「わたしは誰でしょう?」、それをもう一度ひとつずつ読んでみて、そんな自分を好きと感じていたら○を、好きじゃないなと感じていたら×を、どちらでもないなと感じたら△をつけてみてください。

また二人で紹介しあってみてください。

現在位置を知る とがめず、責めず

いまやっているのはこういうことなんです。わたしたちは日々、自分に対して何かしら思っていて、口に出さずとも頭の中であれこれ思っている。その自分を見つめるまなざしの癖にまず気づくということがポイント。自分のことをどういう風にみているか、どんなセルフイメージを持っているかということに気づくことから始まります。それは別の言い方をすれば「現在位置を知る」ということです。

わたしたちは明確であれ、漠然とであれ、なんらかの夢やありたい自分というものがあります。そこに向かうのについやってしまうのが、いまの自分を否定して、バッテンをつけて、だから夢に向かう努力をするというもの。これだとうまくいかないのです。ちょっとカーナビで考えてみましょう。

ハート(イラスト)

いまから別府温泉に行きたい、行く!と決めて、目的地「別府温泉」を入力しました。もうひとつ入力しないといけないものがあるけれど、さぁ何でしょう?そうです、出発地です。いま鹿児島にいるのか、大阪にいるのかでナビゲーションは変わってきます。いまどこにいるのか分からないのにナビゲーションすることは出来ない。カーナビで考えたら一目瞭然のことなのだけれど、自分自身のことだと「いまの自分」つまり現在位置を否定して、そこから夢にいこうとしてしまう。これはとても難しい、というか無理なんじゃないかしらと思うのです。いまの自分を罰したり、とがめたりするのではなく、ただ、いまそうなんだと受け止めて、そこからより在りたい姿になろうとするのがおすすめです。

自尊感情(セルフエスティーム)

自分をどう見ているか、自分についてのイメージ(セルフイメージ)がよい方が生きやすい。自分のことをまあまあ好きと思えるかどうか。皆さんはどうでしょう?

わたしは周りからは自尊感情が高いと思われていたと思います。でも実際は違って、わたしの心のなかは劣等感や自分を嫌だ、情けないと思う気持ちがうずまいていました。でも親や先生、友達によく思われたい気持ちが強かったので、なんでもがんばるタイプでした。長女ということもあったのかな、怒られたくないからお手伝いもするし、勉強もするし、苦手なスポーツも努力する。がんばった見返りとして、みんなから評価されたい気持ちが強く湧いてくる。そしてとにかく失敗が怖かった。ちょっとでも何か言われると「怒られてる」「責められてる」と感じて、それはそれは言い訳をたくさん。失敗が怖いから、何かに挑戦することもできないことが多かったのです。

わたしは英語が好きで割と得意だったので、留学したいなと思っていました。高校のときには先生に「交換留学試験に申し込んでみたら?」と言われました。そのときわたしはこう思ったんですね。まず校内選考があるやん?それで落ちたら恥ずかしい…もし受かったとして、留学先で勉強についていけなくて途中で帰国なんてことになったらどうしよう!!恥ずかしくて学校に戻れない。じゃ、やめておこう。そう考えて試験を受けませんでした。大学のときも同じ。興味はあるけれど失敗したときのことが怖くて受けることすらしませんでした。

大学時代、こんな友達がいたんです。彼女は英語の試験を落として留年しちゃったんです。その彼女、一年後に海外旅行に出かけ、英語が通じるのを体感してうれしかったらしく「わたし、交換留学の試験受けることにした」うれしそうに、そう言ったんです。わたしはすっごく驚いた。(えっ!?あなた、英語ができなくて留年したよね?なのに、留学の試験、受けるの!?)心の中で叫びました。もうびっくりです。彼女はわたしと違って自尊感情が高かったんですね。確かに一年前は英語ができなくて留年した、でもいま留学したい気持ちがあるんだから受けてみよう、たぶん彼女はそんな思考回路だったと思うのです。結果学内選考に通り、彼女は一年間アメリカへ留学しました。わたしは自信がなく、セルフイメージがよくないから挑戦すらしない。その結果、落ちることもないけれど、受かることもない。自分が自分に対してどういうイメージを持っているかが、こんなにも人の言動に影響しているんだと痛感した出来事です。

ワーク 3 自尊感情について話し合う

いまセルフイメージ、自尊感情についてお話ししました。それを聴いて思ったこと、感じたこと、なんでもいいので二人で話してみてください。

わたしのいいところ

女性(イラスト)

自尊感情が高いと生きやすいということはわかった、じゃぁどうやって高めたらいいの?これにはいろいろな方法があります。ただどれも特効薬ではないんです。ひとつ紹介すると、それは自分のいいところに自分で気づくということ。こんな地味に思えることなのです。わたしたちは自分の短所、欠点についてはとても敏感だし、次々に口にできたりする。でも、長所となると途端に口をつぐんでしまう。これはバランスが崩れてます。比較的元気なときに、自分のいいところをいっぱい思い出しておくことが大事だなと感じています。

ワーク 4-1 「わたしのいいところ」を書こう

自分のいいところを少なくとも20個!書き出してみてください。自分を厳しく厳しく見るんじゃなくて、あたたかくゆるやかに見つめてみる。わたしたちは、欠点については、ちょっと誰かに言われただけで例えば「わたしは不器用」と頑なに信じ込んだりする傾向があります。なのに長所となると「時間を守る…うーーん、遅刻したことあるし…」などとものすごく厳しくなっちゃうところがあります。なので、「まあまあ時間を守るな」「まあまあ友達思いかな」そう思ったら、ためらわずどんどん「いいところ」に書きこむ。そんな風に、やさしく自分を見つめながら書いてみてください。

ワーク 4-2 いいところを紹介しあおう

いま書いた「いいところ」をお互いに紹介しあいましょう。ちゃんと声に出して言ってみることが大切なのです。口にするときの自分の感覚にもちょっと注意してみてくださいね。もしかしたら少し照れくさいような感じを覚えるかもしれません。でも、自分のいいところを知っていて、それをあっさりさっぱり口にできることはとても素敵なことです。

ワーク 4-3 お互いのいいところを読みあう

発見(イラスト)

やってみてどうでしたか?いろいろ発見があったかもしれません。最後にこんなことをしてみようと思います。いいところを書いた紙を交換してください。そして、お互いに相手のいいところを心を込めて読んでみます。読んでもらう方はしっかりと聴きます。私たちの多くは、自分にとってうれしいメッセージは跳ね返してしまい、うれしくないメッセージについてはあまり吟味せず、素直に自分に取り入れてしまう癖をもっています。恥ずかしさなどから、うれしいメッセージは弾いてしまう。これをしていると、自分の内側にたまっていくのはうれしくないメッセージばかり。うれしいメッセージの受け取り拒否をし続けていると、そのうち、うれしいメッセージはやってこなくなってしまうのです。受け取るというのは実は力が要ることです。いまからそれぞれ相手の方に自分のいいところを読んでもらいます。どうぞ受け取り拒否をせず、受けとめてくださいね。

まとめ

今日は自分を見つめるというテーマで時間を過ごしてきました。わたしはずっと自分に厳しく生きていました。それは短期的にはよかったこともあったと思います。でもしんどさが続きました。生きるってもっと楽しいことじゃないのかしら?そう思って、楽にしあわせに過ごせるようになるためにあれこれ試してみて、自分にやさしくある方が生きやすいなと気づきました。皆さんも今までのやり方で上手くいかないと感じることがあるのなら、新しいやり方を試してみるのもいいのではと思います。

今日体験したこと、耳にしたことで、「やってみたい」「やれるかも」そう感じたことから、ちょっとずつ実践してみてくださいね。

研修参加者の感想
  • 私は自分のいいところを人に言うのはなかなかできません。このような場でも『本当に思っていること』は言葉にはできませんでした。しかし自分のことをこんなにも一生懸命考える時間は意外とないのでいい時間を過ごせました。
  • 自尊心があまり高くない私にはハードルが高いように思われましたが、お話を聞いていくうちに「あ、そんなに重く考えなくてもいいんだ」と少し気が楽になったような気がしました。
  • もともと自分に自信を持つことが苦手で、だれかにほめられても素直に受けとることができないのですが、それをはねのけるのではなくて受けとれるようになりたいと思いました。カーナビのたとえがとても分かりやすかったです。私も目標はあるのですが、“今の自分”をまだまだだめだと否定してしまうクセがあるので現在地をまず認めるところからやってみたいです。
  • 私の考えオカシイかな?とか思ってなやむコトありましたが、みんな似たような事かんがえたりするんだと思い気が楽になりました。自尊感情高めていきたいです。ありがとうございました。
  • “自分と向き合う”という事は、いつも何だか難しくもありはずかしくもあるんですが、今日は落ち着いた感じでお話を聞く事が出来ました。自尊心は高い方ではないですが、少しずつでも持ち上げてやって、新しい仕事を見つける一歩をふみ出す為の力になればいいなと思いました。たまには自分をほめてあげようとも思います(笑)ありがとうございました!
植木美恵子プロフィール

植木美恵子一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団、相談室スタッフ。
民間企業、自営業、派遣社員を体験し、2000年より「自分を知る」「コミュニケーション」等をテーマにファシリテーター活動を始める。
大学のハラスメント相談室カウンセラーとしても勤務。

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