子どもたちが暴力から自分を守るために

CAP(キャップ)みしま・大阪
実施日:2013年7月5日(金)

子どもへの暴力防止プログラム

CAPとは、Child Assault Prevention、子どもへの暴力防止のことです。子どもたちがいじめ、痴漢、誘拐、性暴力といった様々な暴力から自分の心とからだを守るための人権教育プログラムです。1978(昭和53)年アメリカオハイオ州コロンバスでレイプ事件が発生し、精神的に不安定になった子どもたちに対しての救援プログラムとしてレイプ救援センターで誕生しました。

森田ゆりさんによって日本へ紹介され、現在全国各地で約160のCAPグループが活動しています。私たちは1997(平成9)年、高槻でCAPを立ち上げました。今は茨木市、高槻市、大東市などの保育所、幼稚園、中学校、児童養護施設にプログラムを届けています。

暴力って何だろう?

では暴力って何でしょう?身体的暴力を受けると、怖かったり悲しかったり心も傷つきます。心を傷つけられる暴力を受ける、つまり言葉の暴力や無視されると、からだも平気ではありません。暴力とは人の心とからだを傷つけるものです。

いじめ、体罰、DV(ドメスティック・バイオレンス)。学校、家庭でも暴力はあります。子どもから親への暴力もあります。地域のなかで起こる、ストーカー、通り魔、レイプ、かつあげ、ひったくり、誘拐などの暴力もあります。最大規模の暴力は戦争です。自分に対しての暴力として、自傷行為、薬物依存、過度のダイエット、自殺などがあります。

子どもができることを一緒に考える

会場風景(写真)

CAPは子どもが暴力にあわないために、あいそうになったら何ができるか子どもと一緒に考えます。一例をあげます。ある村に川が流れていました。ある日、子どもが落ちておぼれました。この事故を防ぐためにどういった手だてが考えられますか?「柵をつくって子どもが川に落ちないようにする」「立て看板を立てる」「大人が見張りにたつ」など様々な防止策が考えられます。これは「禁止、回避」として、大人ができること。大人が守ってあげるという考え方に立っています。

これと異なりCAPの考え方は、子どもができることに焦点を当てます。「子どもに泳ぎを教えよう」となります。「暴力にあった時にこんなことができるんだよ」と子どもに伝え、暴力に会いそうになっても助かる可能性が増えることを教えます。「禁止、回避」のみでは、子どもは「そこに行ったらダメ、そこに行った自分が悪かった」と思ってしまいます。本当は加害者が悪いのに、自分が悪いと思ってしまうことにつながります。

CAPの基本的な考え方として「エンパワメント」「子どもの権利」「コミュニティ」という3つの柱があります。「エンパワメント」とは子どもが本来持っている力を引き出すこと。年齢、理解に合わせて「暴力とはこんなこと」と教え、「被害にあった時にはこんなことができる」と話し合います。劇で体験したり、子どもの問題可決能力を信頼し働きかけます。

エンパワメントとはもともとあった力を取り戻すこと

エンパワメントとは、内なる力の回復です。もともと人はすごい力を持って生まれてきます。赤ちゃんは命の塊です。その力に気づいてその力を取り戻そうということです。

エンパワメント

その中心は人権、生きる力。感性、能力、可能性、生命力、個性、美しさです。しかし否定的なかかわりをされることもあります。それは身近にある「お兄ちゃんはよくできたのに、アナタはね~」という「比較・競争」。そして「過度の期待」。「男だから,女だから,障害を持っているから」という「偏見・差別」。「体罰・性暴力」「いじめ・虐待」などです。それらを人ははねのける力がありますが、あまりにも長い間言われ続けると、はねのける力がなくなってきます。暴力を受けると、自分自身の力を奪われていきます。それに気づいて、自分にもともとあった素晴らしい力を取り戻そう、私は素晴らしい人間なのだ。欠点があってもいい。ありのままでいい。「がんばれ、がんばれ」ではなく「よくがんばっているよ!」と認めることが大切です。

そういう肯定的なかかわりができる人と人との関係性がエンパワメントです。

暴力から自分を守る「NO、GO、TELL」

CAPの権利はあかちゃんからお年寄りまで誰もが持っている基本的な権利であり、ルールや義務を伴わない権利です。

暴力にあうと、恐怖や不安、無力感を感じ選択肢がないという心理状態になり、力を奪われます。暴力にあいそうになったらできることとして「NO、GO、TELL」の選択肢があります。

  • NO … 「いや」って言っていいよ
  • GO … 逃げていいよ。とくべつな叫び声を出そう
  • TELL … 信頼できるおとなに話そう

「NO、GO、TELL」で子どもたちにあきらめないことを教えます。「いやって言ってもいい。もし言えなくてもいい。逃げてもいい。逃げられなくても悪くない。大人に相談しよう」この3つのなかで、子どもにできることを選んでいきます。「あきらめないで自分を信じてくれる人に話そう」と伝えます。子どもの話を聴くことができる大人がいることを子どもたちにわかってもらうことが大切です。

子どもの心を聴く大人になる

普段から子どもの話を聴くことは大切なことです。「聞く」ではなく「聴く」。聴いて欲しいのは心、気持ちです。「…で楽しかった、悲しかった」その子の気持ちを共感して聴いてください。同感でなくていい、共感でいいのです。「わかったよ」と、気持ちをわかり受け止めることが大切です。聴く時は、じっくりゆっくり黙って聴くことです。

もし暴力にあったことを子どもが話してきたら、「話してくれてありがとう」「あなたを信じるよ」「あなたは悪くない」という3つの言葉を伝えてください。子どもにとって暴力の被害にあったことを、大人に話すことはハードルが高いことです。ですから「話してくれてありがとう」と伝えます。そして「暴力にあったアナタは悪くない」と伝えてください。

子どもの心を聴くことが、子どもの心の手当になります。子どもの心を聴く大人になって欲しいと思います。

みんなで手話歌を合唱

会場風景(写真)

「CAPみしま・大阪」のメンバーの中には「高槻Sign Orchestra」として手話歌に取り組んでいる人もいます。メンバーによる手話歌が披露されました。参加者みんなで手話歌を練習し、合唱しました。

ワーク 手話歌を練習しました。

研修参加者の感想
  • 今までは子どもを守ることは、危険から遠ざけてあげることだと考えていました。子どもの力を引き出すという考え方があることを知った。自分の身を守る方法を教えることも、親の役目だと思いました。
  • はじめての手話だったが歌詞にあわせてやったので、振り付けの一部として憶えやすかった。実際の動作に近い表現だと思いました。
  • 手話歌がよかったです。CAPプログラムを自分の子どもが通っている小学校、保育所でもやって欲しい。小学校と保育所に通う2人の子どもがいるので、それぞれの学年、年齢にあわせたプログラムをやって欲しいです。
CAPみしま・大阪プロフィール

1997(平成9)年に「たかつきCAP」設立。 2001(平成13)年に「CAPみしま・大阪」となる。
高槻市、茨木市、吹田市、枚方市、大東市、大阪市などの中学校、保育所、幼稚園、児童養護施設などで、暴力防止プログラム、研修、ワークショップを実施。
2012年3月までに 8万人以上の子ども、おとなにCAPワークショップを届ける。

  〒569-1124 大阪府高槻市南芥川町8-1-317
  TEL/FAX 072-681-6866
  e-mail cap-mishima-osaka@y7.dion.ne.jp
  CAPみしま・大阪
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